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概要

営業の悪魔

16「主任ごときで出世とは言わねえよ。会社に行く時間だぞ」拓也はテーブルを離れた。航介はお茶のお代わりをあきらめて後に続いた。3 売れてナンボの営業代行「おいっ、あさマネが帰ってきたぞ」定時でアポ取りをやめて帰り支度をしていた航介に、一年先輩の上かみ 条じようが耳打ちした。「うそっ!マネージャーは本社で会議でしょ。泊まりじゃないんですか?」反射的に顔を上げた。事務所の壁の透明パネル越しに、通路を歩いてくる旭川の姿が見える。航介らがいるフロアーと通路を隔てているドアが音を立てて開いた。「お前たち、明日のアポは取れてんのか!」旭川が一喝すると、所内の喧けん騒そうがぴたりと止んだ。翌日の訪問予定がなければ、就業時間が終了しても電話がけを延々と命じられることがある。今日はその流れになりそうな気がした。いつぞやは、夜の十一時まで電話を続けて、客にドヤされまくった。これが法人対象の営業ではなく個人対象のそれならば違法となるはずだ、と航介は苦々しく思ったものだ。施錠した机の引き出しを再び開けた。営業先リストを取り出し、重い気分のまま受話器を取りかけたそのとき、「南原、ちょっと来い」と呼ばれた。声がしたほうに目をやると、旭川が