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概要

営業の悪魔

1章 うまくいかなければ使い捨て17航介に手招きをしている。そしてローパーテーションで仕切られた奥のスペースに入っていくのが見えた。説教かな。しおらしい態度を見せてやり過ごせばいいか。航介はそろりと立ち上がった。拓也が何事かという表情で航介を見ている。航介は首をかしげてみせてから、フロアーの奥へ向かった。先に座っている旭川は、何かを思案しているように目を閉じてこめかみを人差し指でもんでいた。椅子の背にもたれかかった姿勢では、ウエスト回りのぜい肉がよけいにダブついて見える。旭川が目を開けた。航介の姿を認めると座るように促うながしてから、話を切り出した。「南原には、本日限りで営業職から外れてもらうことになった」「えっ?」航介は言われた言葉の意味をすぐに飲みこめず、ついぼうっとした。うちは営業会社だ。社内に営業以外の仕事なんてあるのかよ。売れているとは言い難いけど、クビになるほどひどいレベルではないよな。そんな予感すらなかった─。航介は頭がしびれたような気になり、視界がゆらゆらと揺れ始めた。「辞めろ……ということですか」ようやく言えた。しかし旭川は首を振る。「お前は正社員だから、はい辞めてくださいね、と簡単には解雇できないんだ。でも、もし受