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概要

営業の悪魔

1章 うまくいかなければ使い捨て25れたことがないせいで、他部署の事情については暗かった。滝沢は続ける。「しかしな、営業力が強いといっても、営業社員の全員が優秀なのではない。上位レベルの二割程度の社員で会社の屋台骨を支えているのが実情だ。その二割の社員たちも、上には上がいることをわかっている。それなのに、自分たちの遥はるか上を行くトップセールスマンが営業現場でどんな売り方をしているのかを案外知らないものなんだ。君は知りたいと思うことはなかったか?」「知りたいとは思います。でも正直なところ、トップ集団の人たちはよその星の住人みたいで、自分とはまったく縁がないと思っていました」「自分が理解できるレベルを超えたら、宇宙人呼ばわりか。君にやってもらいたい仕事は、そんな負け犬根性では務まらないよ」「……はい」滝沢にたしなめられて、航介はつい下を向いた。「どんな天才のやることだって、理屈で説明のつかないことなんてないはずだ。天才セールスマンがやっていることは、マジックでもミラクルでもない。本当はすべて言語化できるし、他人にも再現できるはずなんだよ。連中をもっと上手に活用すべきなんだ」滝沢は話をいったん区切り、組んでいる足をほどいた。「ところがうちの会社も社員数が二千名を超えたあたりから、創業当時のとんがった社風が徐々に変わってきた。営業に関して超人的な結果を出す人間が、異端児扱いをされ始めたの