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概要

営業の悪魔

1章 うまくいかなければ使い捨て31スが少なくなるって言い訳していたな。一体何のことだったんだ?」「クレーム客ともめて、契約後のリース物件を途中解約しろとゴネられると、営業側に落ち度がなくても弁済を迫られることがあります。こういうとき、会社はお金を負担してくれないので─」「ふん、当然だ。自己責任だろ」杉が話の腰を折る。航介はうなずかずに話を続けた。「リース期間中のトナー代に相当する見舞金を営業担当者とマネージャーが折半して自腹を切るケースもあります。でもぼくは、営業とお客様の契約時のやり取りを正確に覚えているので、お客様の言いなりにならずに済むことが度々あったんです」航介の話に杉は、「なるほど」と口を開けたままうなずいた。「きっかけは何であれ、自分のチャンスだと思ってがんばろうと思います」「どうだかねえ。皆早々に失敗したからな。でも先に送りこんだメンバーのほうがお前さんよりも頭がよかったし、仕事ができる奴らだった」杉の目つきには、人をばかにした色合いが感じられた。「それでは、他にも同じ任務で動いている人がいるんですか」「いる、と言うより、いた。お前さんで三人目だ」「その人たちは、どうして失敗したのですか?」航介が訊ねると、杉は面倒くさそうな顔をした。