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概要

営業の悪魔

36スクまで滝沢は航介のそばを離れなかった。同行取材をする対象者についての簡単な情報を杉から教わっている間、滝沢は航介の背後でずっと仁に王おう立ちしている。杉は、先ほどの人を小馬鹿にした口調とは打って変わって、丁寧な話しぶりだ。杉のこわばった表情を見れば、滝沢がどれほど険しい目つきをしているのか想像ができた。言葉を何度も噛む杉の動揺ぶりは、見ていておかしく、航介は胸がすっとする気がした。杉から預かった物をすべてキャリーバッグに押し込み、航介は営業推進室のフロアーを出てエレベーターに乗り込んだ。ビルを出ようかというとき、携帯がまた振動した。確認する。拓也からメールだ。『異動先、もう決まったのか?どこになったか教えて。』航介は、『今はまだ言えないけど、とりあえず本部長預かりの身になった(笑)。これから名な古ご屋やへ出張だよ。』とだけ返信した。すぐに、『それ、どういうこと?』と拓也から返ってきたが、航介はメールを返さなかった。