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概要

営業の悪魔

10「昆布田様、リースの未払い金がなくなるわけではないんです」「ちまちましたことはええねん。条件だけそこにチャッチャと書いといてや」昆布田はコピー用紙の裏紙を一枚、机越しに立っている航介の前にすべらせた。「であればですね、現行機種のカウンター料金と、残りのお支払い金額などを教えていただきましたら─」「それはもう、ええて。自分ら営業の人間はな、話長いねん」「はあ……、すみません」航介はわけがわからないまま、あいまいに謝った。「教えろ言われて、はい言うて、簡単にこっちの懐ふところを見せると思うんか?自分らは客の情報をつかんだら、値段を付け替えてぼったくるんやろう?」「ごっ、誤解です。御社にとってのメリットを目一杯出したいものですから」「うちをカモや思てたら、許さんでぇ」昆布田が威い嚇かくするかのように、下あごを突き出して言った。 ─帰りてえ。航介は、手のひらの汗でよれた名刺をこっそりとポケットに入れた。昆布田を見ていると、仕入れ値を割るほど値引きしたところで首を縦に振るとは思えない。「兄ちゃん、自分いくつや?何年営業してんねん?」「二十五歳です……。新卒でいまの会社に入って、営業は三年やっています」