ブックタイトル謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点
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謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点
17 第一章 親子の物語としての源氏物語心ざしてはべりしに、をこがましかりしありさまなりしを、誰たれも誰もあやしとやはおぼしたりし。皆、かの御み方かたにこそ御心寄せはべるめりしを、その本ほ意い違たがふさまにてこそは、かくてもさぶらひたまふめれど、いとほしさに、いかでさるかたにても、人に劣らぬさまにもてなしきこえむ、さばかりねたげなりし人の見るところもあり、などこそは思ひはべりつれど、忍びてわが心の入るかたに、なびきたまふにこそははべらめ。斎院の御ことは、ましてさもあらむ。何ごとにつけても、公おほやけの御方かたにうしろやすからず見ゆるは、春とう宮ぐうの御世、心寄せ異なる人なれば、ことわりになむあめる」と、すくすくしうのたまひつづくるに……。……この弘徽殿大后という人は、もともと徹底的に源氏を憎んでいることでもあり、満面に怒気を漲みなぎらせて、「おのれおのれ、おなじ帝と申しながら、昔からあの連中は今きん上じよう陛下(朱雀帝)を貶おとしめ侮あなどって……辞職した左大臣なども、いちばん大事に育てていた娘を、兄にあたる陛下には差し出すことをせず、よりにもよって弟の源氏の、しかもまだほんの子どもであったものの元服の添い臥しとして取っておくなど、言ごん語ご道どう断だんなる