ブックタイトル謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

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概要

謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

20と、取りかへさまほしう、よろづおぼしむつかりける。老いもておはするままに、さがなさもまさりて、院もくらべ苦しく、堪たへがたくぞ思ひきこえたまひける。「さてもさても、こう無用に長生きなどするから、こんな末の世を見る目にあうのだ」と、愚痴をこぼしつつ、それにつけても、さっさと位を譲ってしまった朱雀院が恨めしく、もう一度朱雀の世に戻したいと願いもする。そうなれば、よろずのことが面白くなくてひどく機嫌が悪い。しかも老いが募っていくにつれて、口さがない意地悪な性格は、ますます甚だしくなっていくのだから、朱雀院としてももはや手が付けられず、堪えがたい思いに苦慮されているのであった。こんな風にその晩年は叙述される。結局、源氏という「邪魔者」の出現が、彼女の「幸福」をなにもかも台無しにしてしまったのだ。このところ、「老いもておはするままに、さがなさもまさりて、院もくらべ苦しく、堪へがたくぞ思ひきこえたまひける」と叙述してあるのだけれど、これとて、弘徽殿大后の身になって考えたら、そんな愚痴の百や二百は言いたくなるのが人情の自然か