ブックタイトル謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

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概要

謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

29 第一章 親子の物語としての源氏物語〈……でも、それもこれも、みな自分がそのように承諾したせいなので、他の誰のせいでもない。すべてはこの自分の心次第……もし、これでどうしても嫌だと申し上げたら、それを強いてもとは君はおっしゃるまい。ああ、なんだってまた、姫を差し上げる約束などしてしまったのかしら、つまらぬことを言ってしまった。……でもそんなこと思ってみても、今さら嫌ですと言うこともできない……そんなことをすれば、いかにも軽薄な女のように思われてしまう……〉御方の心の中では、正直な気持ちと丈たけ高たかい理性とがせめぎ合っている。その目の前には、姫君が、なんともいえずかわいらしい姿で、ちょこんと座っている。この様子を見て、源氏は、〈ああ、こういうすばらしい姫を産んだ、この人とはよほど深い前世からの因縁があったのだな〉と思うのであった。この春あたりから伸ばしている髪の毛が、今ちょうど尼さんの髪のように背中あたりまで伸びてゆらゆらと艶つやめき、また?のやわやわとした感じや、目め許もとのふわっと匂におい立つような美しさは、言葉に出して言うのも今さらという思いがする。「人の親の心は闇やみにあらねども子を思ふ道にまどひぬるかな(人の親の心がおしなべて闇だというのではないが、ただ、子を思うその恩愛の情のために、誰もみな道に惑うてしまっているのだ)」という名高い歌が、源氏の心に去来する。〈いたいけなわが子を、よその家の子として遠くから思い遣るなど、さぞ親とし