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概要

日米開戦の正体

11 はじめにまっています。考える材料を提供できればと思っています。この本を書く過程で多くの人の本を読みました。数々の史料・資料に当たりました。その中に、森もり島しま守もり人と著『陰謀・暗殺・軍刀』(岩波新書)もありました。森島守人は外務省員で、柳りゆう条じよう湖こ事件の際、中国東北部で軍部に刀で脅おどかされています。その彼が次のように書いています。チャーチルは「近代生活に対する民衆の影響」と題する論文中において「国民の歴史でも、個人の経験でも、絶えず起る偶然な出来事が、決定的な働きをしている。例えば、あの命令がなかったならばとか、あの攻撃がなかったならばとか、あの馬が転ばなかったならばとか、あの列車に逢わなかったならばとか、われわれの人生行路はそんな些細なことで、まったく変ったものになり得る。そして自分の運命の変化に伴うて、他の人達の運命も変るであろうし、だんだんにそれが広って、全世界の動向も変って来るのである。若い平凡人の日常生活が、そんな影響を持つとすれば、もっと剛い人達、例えば大思想家、大発明家や軍司令官の周辺に起る偶然が、どんな大きな影響を歴史に及ぼすか想像に難しくない。」(昭和二十四年三月号「心」)と述べているが、幾多の事件に際して、日本政府のとった無雑作な決定や、出先の専断的行為が、日本の運命に至大な影響を与えた点から見ても、容易に首しゆ肯こうし得る。この点に