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概要

日米開戦の正体

74かつ米国は、戦闘機の大量生産に移行していきます。真珠湾で軍艦を数隻撃沈しても米国の長期的戦闘力には大きい影響を与えません。すでに見たように、アチソン次官補はパール・ハーバー攻撃について「これ以上の愚策は想像もできなかった」と記述していますが、まさにその通りだと思います。山本五十六は優れた戦術家ではありましたが、レベルの低い戦略家でした。太田文雄著『日本人は戦略・情報に疎いのか』(芙蓉書房出版)によれば、ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題大学院での演習で、第二次大戦の評価(各々一〇点満点)を行ないました。そこで日本に戦術六点と高い評価(ドイツ七、米国六、英国四)を与えていますが、戦略では二と全くの落第評価をつけています。たぶん国際的な山本五十六の評価もこれが妥当と思います。日露戦争から真珠湾までの歴史を見ると、興味深い共通性があります。事件を起こした、あるいは後それに深く関与した人物は、「戦術家」として非常に優れています。行なおうとした軍事行動など、実に見事に完遂しています。しかし、中・長期的に見ると大変な災難をもたらしています。その点で、山本五十六と同じ流れにあります。これら事件は後々検証しますが、とりあえず列挙します。張作霖爆殺事件─河こう本もと大だい作さく大佐柳条湖事件─石原莞爾中佐盧溝橋事件─ 武む藤とう章あきら大佐