ブックタイトル京都大学人気講義 サイエンスの発想法

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概要

京都大学人気講義 サイエンスの発想法

第1 講「嫌いなもの」でアイデアをつかもう!017で彼女に物理を教えていたときです。バスケットボールは国体強化選手の腕前ながら、前回の物理のテストは100点満点中5点。物理の先生に「上杉に教えてもらいなさい」と授業中に公言され、彼女は顔を真っ赤にしたのでした。図書室で懸けん命めいに教えました。「わかった?」と彼女の方を見れば、ショートカットの前髪を気にしながら「うん、わかった」と力なく答えます。それを試験当日まで繰り返しました。採点後の答案が返却されたときの彼女を、周りの景色を切り抜いた映像のように覚えています。廊下にたむろする女子の集団の中から、彼女は満面の笑みをたたえて、親指と人差し指で丸を作って見せました。後で訊き けば、それは「OK」ではなく「0点」。「好きなことを教えるのは難しい」と痛感したのは、そのときが初めてです。いっぽうで、私は英語、化学、生物学は苦手でした。記憶することばかりで味気ない科目に思えました。英語の学内順位は1年生のときに350人中345番。人生とはわからないもので、後にアメリカの大学で英、語0を使って化学と生物学を教えることになるとは思いませんでした。