"ちょいモテオヤジ"など多くのキーワードを生みだしてヒットした男性ファッション誌『レオン』。桜沢さんはその女性版である『ニキータ』を愛読しているそうです。対談当日、両誌の編集長である岸田一郎氏と桜沢さんの手首には、偶然にも同じカルティエのタンク・アメリカン(腕時計)が。モノ選びのセンスが似ているおふたりの会話は"モテ"について大いに盛り上がりました。
桜沢:『ニキータ』が創刊されたときに、あまりにもおもしろいから、いきなり花を送りつけようかな思いました。変な人だと思われると困るので我慢しましたけど(笑)。
『掌にダイヤモンド』
定価580円
絶賛発売中!!
岸田:光栄です。
『ニキータ』も岸田さんがディレクションしてらっしゃるんですよね。キャッチフレーズも岸田さんが?

ええ。うちみたいな中堅出版社は大手と同じことをしてもダメなんです。でも創刊誌はやっぱり目立たなきゃいけないでしょ。そうすると、他誌のマネでは成功できない。要するに見本がないから、ある程度の指標は僕が作らなきゃいけなくて。

メイク特集が画期的でしたよ。圧倒的に他の雑誌と違うし、「そうだったのか!」っていうことだらけで、勉強になりました。あれは岸田さんの好みが反映されてるんでしょ?
少しはね(笑)。だって僕もメイクの詳細まではわからないよ。

そうですか。私、びっくりしたのが「モテ色ネイル」の特集で「ガリ色」ってのがあって(笑)。ガリってお寿司についてるアレ?ってすごく驚きました。

寿司を手で食べるときに爪が変な色だと気持ち悪いじゃない。
だからガリと同化するように...って!?
会議でその案が出たときに内部でもそれはどうなのって話になったんだけど、おもしろいからいいかってことになってね。
あれにはぐっときましたよ。雑誌を読んでいるといろいろ想像してしまって、岸田編集長は常に葉巻を吸ってるイメージなんですけど。(笑)。最近はアルゼンチン・タンゴをやってらっしゃるとか。
なんでタンゴかっていうと、読者イベントで盛り上がるっていうのもあるんだけど、ダンスって男女が仲良くなるコミュニケーションツールのひとつでしょ。でも、日本人はいつしかダンスを忘れてしまって、男女がお互いにお近づきになるのがヘタになってしまった。
ダンスイベントでは「とりあえず踊りませんか?」って声をかけやすいから。まだ好きでも嫌いでもないけどふたりで踊る"グレーな時間"、これが大事なんですね。
そうそう。アルゼンチン・タンゴは体をくっつけて踊るのが邪(よこしま)でいいじゃない。それでいて、踊り終わったらまた敬語で話したり(笑)。もし「あんまり好きじゃないな」って思ったらそのまま別れればいい。そういうとっかかりがあるかないかで、ずいぶんモテ方が変わってくると思う。今度うちのイベントに遊びにきてくださいよ。
ぜひ。最近は夜遊びの場でもおしゃれしてる人が少なくてちょっと不満なんですよね。
男女ともに言えるんだけど、いちばん自分がモテた時代でおしゃれが止まってる人って多いよね。でもそれじゃまずい。
もうちょっと進化していかないとね。
だからダンスも当時のままの踊りじゃまずいわけで。そういう意味でもタンゴをね。
それはいい提案ですね。そう言われると納得。私はてっきり編集長が個人的にハマってるからだと...。

うちの編集部は一応全員が踊れることになってる。読者イベントの日が近づいてくると、会議室で練習したりね。

必須科目なんだ(笑)。ところで、岸田さんの好きなタイプは?
僕なりのこだわりが3つあって、身長が高くて鎖骨がキレイで足が細い人。
その3つでどれが最優先なんですか?
どれも譲れないなあ。他も言いだしたらキリがないけど。
ずいぶん前に、某編集部の女の人が岸田さんに取材をしたら、「ドルチェ&ガッバーナの38を着れないとダメだ!」って言ってたって聞きましたよ。
「理想の女性の体型は?」って言うから「わかりやすく言うとドルガバのサイズ38が着れるくらいかな」って。すごくメリハリがあるスタイルでしょ。

顔や髪型には、そういうはっきりした好みはあるんですか?

それも言いだしたらキリがない(笑)。髪型はショートが好きだから、説得して切ってもらう。
すごいな(笑)。ショートヘア好きとは意外。
なんでかっていうと、ショートって「ターボ」みたいなもので「よりそうなる」んです。キレイな人はよりキレイになるわけだから、美形はショートヘアにした方がいいよ。
男性でショートが好きな人は珍しいですよね。日本人では特に。
そりゃあ、そのへんの半径50メートル以内の男に聞いたら圧倒的にロング好きが多いと思う。でも、自分が付き合いたいと思うような素敵な男性だけにアンケートしたら、ショート好きって結構多いと思うけどね。
一般論で判断しちゃいけないのね。
そう。自分のターゲットに照準を合わせないと。
『掌にダイヤモンド』に出てくる堂島という男性は、私の想像上の人物なんですけど、実際はどうなのかなって。大人の男の人には若い女子を育てたいって気持ちがあるんですか。
やっぱりなんだかんだ言って、若い子好きは多いですよ。
ですよね。『レオン』読者のおじさまたちのターゲットは年下のピチッとした女の子ってかんじ。
ただ、よく日本の女性は「ヨーロッパの女性はいくつになっても男性に大事にされていいわね。それに引き替え日本の男性はみんな小娘(コムスメ)好きでダメだわ」って言うんだけど、それは向こうのマダムがみんながんばってキレイにしてて魅力的である賜物。だからオヤジたちも大切にするわけ。日本の女性は若作り一本槍でテクニックが乏しいのが残念。
なるほど、確かに。
若作りだけだったら、本当に若いコムスメの勝ちでしょ。

まったくです。

だから若くないことを補って余りある、大人の女ならではの貫禄やセクシーさ、そういうものを身につけましょうって提案したい。『ニキータ』と『レオン』は恋人同士みたいってよく言われるんだけど、実際はそうじゃないのね。
私も『ニキータ』の恋のお相手は"ちょいモテオヤジ"じゃないだろうなって思います。
どちらもテクニカルな力量ある女と男だけど、そういうタイプは実際付き合う相手はそうでないことが多いよね。どちらかが手玉に取る(笑)。だから『ニキータ』ちゃんと『レオン』くんが付き合うことは少ないんじゃないかな。
もし付き合うことになったら、かなりの攻防戦が予想されますね(笑)。
それで、どちらかが負けるんだろうね。それで主従がついて、落ち着くのかも。
以前は若い子がおじさんと付き合う理由って、「かっこいいから」じゃなくて「お金持ってるから」だったでしょ。
確かにオヤジの方が金を持ってる。でもそれだけかっていうと、圧倒的な経験値とそれから生まれる余裕、それが若い子にとって魅力的に映るんじゃないかな。例えばオヤジがレストランでデートするとき、コースは御法度。
隣と同じものを相手に食べさせちゃいけないって?
そう。女の子の好物や苦手なものを聞いてあげて、全部アラカルトでオーダー。食後のデザートにはフルーツを頼んで、ブドウを自分の手で食べさせてあげたりね。
あはは(笑)。エロティックですね。
そういうテクニックは、知っていればみんなできるようになるし。おしゃれについてだって、「モテるオヤジの作り方」(『レオン』の特集記事)を読んで、上から下まで服を揃えて、最終的には「これでオレはモテるはずだ!」って胸を張るようになる。
そこから生まれる自信が大事なのね。『レオン』発売後の1週間は電話が鳴りっぱなしだって六本木のエストネーション(六本木ヒルズ内の大型セレクトショップ)のお兄さんが言ってましたよ。

大人の男がかっこよくなると、それに憧れる若者がマネをしだすんだよね。昔はキャバクラに大枚つぎ込んでいたオヤジも、最近は「カシミアのジャケットにサンダルなんだ」ってエストネーション行って服を揃えて、隣のミヨちゃんを口説いてるんじゃないかな。でも、モテるオヤジが増えると小僧は受難の時代だよね。若い女の子をとられちゃうわけだから。

その子たちを『ニキータ』読者が救済したり?
『ニキータ』の必須アイテム、乳間(ニュウカン)ネックレスで誘惑してね。
うちの夫がすごく『レオン』のファンで、この前載ってたヴィトンのサーフパンツ買ってましたよ。今度はぜひ「たき火特集」をやってほしいって言ってました。"やっぱり男はたき火だ!"とかって。
たき火や暖炉は人間にとって非常にプリミティブなものでいいんです。暖炉をふたりで見つめたりね。
そういう女子を口説くテクも満載ですけど、実際の成功例ですか?
多少ね(笑)。
多少ですか!? ほんとかな(笑)。
(2005年6月『レオン』編集部にて)
※この対談は文庫『掌にダイヤモンド』の巻末に収録されています

Profile
桜沢エリカ
Erica Sakurazawa


7月8日東京生まれ。ラブストーリーを情感たっぷりに描き、男女問わず多くのファンを獲得。また、TVや女性誌などでそのライフスタイルに注目が集まる。2005年、代表作『天使』(祥伝社)が映画化。近作に"天使シリーズ"第3弾の『天使の棲む街』、エッセイコミック『今日もお天気』(同)など。現在、当サイトにて『ラブリー!』を好評連載中!
 
岸田 一郎
Ichiro Kishida


編集者。1951年4月15日生まれ。日本大学経済学部卒業後、世界文化社へ入社。『Begin』、『Men'sEX』など数々の男性ファッション誌の創刊編集長を歴任。2000年、主婦と生活社に入社し、2001年9月の『LEON』創刊に続き、2004年9月にその女性版である『NIKITA』を創刊。現在、両誌の編集長として超多忙な日々を送る。