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「写楽」問題は終わっていない
著者名:田中英道

2012-01-30 三矢宗久さん 埼玉県
門外漢である小生には、作品の質を見極めるという直接的な証明の全てを理解できた訳ではない。しかしながら筆者が挙げた傍証の各々は知的好奇心を充分に満足させる物であり、その結果、科学論文や上質な推理小説を読んだ時のような醍醐味を味わった。第三章の内容を更に知りたくなり、前著「実証 写楽は北斎である」まで一気に読み終えたほどである。

また能役者は、当時の関係者が北斎を守るために作った写楽の影武者、と考えるとロマンがあって楽しい。空気を読めない一部の人が、うっかり真実(96p)を書き記したのか。

蛇足ながら気になる点が二つ。(1)第三章の図3において、肝心な天児屋根命の顔が糊付け部にあるため見えない。(2)「実証 写楽は北斎である」第四章に記載された写楽別人説リストにおいて、No.17の近松昌栄は、あくまで「写楽殺人事件」という推理小説における作者の創作(捜査を撹乱するための殺人犯のでっちあげ)と思うが如何?


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