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「自己啓発病」社会
著者名:宮崎 学

2012-05-18 ロボロフさん 東京都
自分は負け組かもしれない。負け組になってしまうかもしれない、という漠たる不安の中で、自助、自己啓発といった言葉が私たちを追い立ててやまない。追い立てられる「病」にかかった社会のカラクリが、極めて分かりやすく分析された本である。 「自助」が成り立つ社会とは、相互扶助が前提された社会でなくてはならない。にも関わらず、今日の相互扶助の力を失った社会で、利己のために自己啓発にいそしむ行為は、まやかしである。・・・小泉構造改革を経て震災後の現在まで、私たちの社会が失ってしまったものと、それでも残された希望の在処が示されて、深く共感できるとともに胸のすく思いがある。そもそも、自己啓発奨励者たちが崇めるスマイルズの「自助論」とは、彼らにとってこそ都合のよいバイブルであるけれども、元々のスマイルズの「自助はやがて共助に繋がるものでなくてはならない」とする根幹の理念を省略した抄訳であるという指摘が衝撃であり、印象深いものであった。

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