ブックタイトル謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

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謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

16ただし、こういう物語の色好みの主人公には、約束事のように必ず一つの欠点があることになっている。それは「をこ」ということである。色好みゆえの「愚かしさ・愚ぐ昧まいな行動」とでも言ったらいいだろうか。『伊勢物語』のむかし男、『竹取物語』の五人の貴公子、『平へい仲ちゆう物語』の平たいらの貞さだ文ふん、近いところでは『好色一代男』の世よ之の 介すけ、などなど「色好みのをこ」は、まことに枚挙に遑いとまがない。そういう伝統のなかに光源氏もある。そこでたとえば、よせばいいのに右大臣邸に忍んでいって、弘徽殿女御の妹の朧おぼろ月づき夜よ と危ない逢おう瀬せ をするうちに、これがばれてとんだスキャンダルになるやら、藤ふじ壺つぼとの密会だって、危うく露顕しそうになって「塗ぬり籠ごめ(納戸)」に隠れたりするやら、まことに危ない橋を渡ったりする。ここに、源氏を追い落とすチャンスがあった。朧月夜との密会を知った弘徽殿は歯がみして源氏を罵ののしり譏そしる。こんなふうに……。……宮は、いとどしき御心なれば、いとものしき御けしきにて、「帝と聞こゆれど、昔より皆みな人ひと思ひ落としきこえて、致ち仕じの大おとど臣も、またなくかしづく一つ女むすめを、兄このかみの坊にておはするにはたてまつらで、弟の源氏にていときなきが元服の副そひ臥ぶしにとり分き、またこの君をも宮仕へにと