ブックタイトル謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

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概要

謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

21 第一章 親子の物語としての源氏物語もしれぬ。かにかくに、「親子の情愛」という物差しを当てて考えたら、弘徽殿という人は、それだけ子を愛し家を守ろうという気持ちが強かったのだと、そう評価することもできるのである。明石の別れ、大井川の別れさて、ところで、その須磨・明石に流りゆう寓ぐうしている間に、源氏は、明石の入道という変わり者の娘、明石の君と契りを結んで、そこに一人の美しい姫君を授かる。これが後の明石の中ちゆう宮ぐうであるが、この姫君が、源氏の唯一の娘として、やがて入じゆ内だいし国こく母も の道を歩むためには、二度の悲しい別れがなくてはならなかった。明石などという辺へん陬すうの地に生おい立ったのでは、とうてい内裏での栄光は約束されない。どうしても、それは、京の源氏の手許に引き取って、十分なお妃きさき教育を施し、かつまた天下無双の源氏の後ろ楯だてを以て他を圧するという用意がなくてはならなかった。それがために、源氏は、しばしば明石の御おん方かたに上京を勧めるが、賢明な明石は、自