ブックタイトル謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点
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謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点
25 第一章 親子の物語としての源氏物語てきたこと、神仏に祈き請せいをかけて、姫君を授かったことなどをかき口説き、最後にこんなことをつぶやくのである。 「……君きみ達たちは、世を照らしたまふべき光しるければ、しばしかかる山がつの心を乱みだりたまふばかりの御契りこそはありけめ、天に生まるる人のあやしき三つの途みちに帰るらむ一ひと時ときに思ひなずらへて、今日長く別れたてまつりぬ。命尽きぬと聞こしめすとも、後のちのことおぼしいとなむな。さらぬ別れに御心うごかしたまふな」と言ひ放はなつものから、「煙けぶりともならむ夕ゆふべまで、若君の御ことをなむ、六ろく時じのつとめにもなほ心ぎたなくうちまぜはべりぬべき」とて、これにぞ、うちひそみぬる。「……が、おまえさまや姫君は、これから世を照らすに違いない光が御おん身みに添うておるのじゃから、おそらくは天てん女によの降臨ででもあったのであろう。それがほんのしばらくの間だけ、こんな田舎爺の心を乱す程度の因いん縁ねんはあったにもせよ、もとより娘が天女とあっては、わしとて天てん人にんのはしくれ0000であったかもしれぬ。聞け