ブックタイトル謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

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概要

謹訳 源氏物語 私抄――味わいつくす十三の視点

31 第一章 親子の物語としての源氏物語いつか木こ 高だかきかげを見るべきまだ二葉ほどの幼い松のような姫、これから先長い長い人生が待っている姫に今ここで松の根を引く00ように引き00別れてしまったら、いったいいつ、この姫松が大きな木になったところを見ることができるのでしょう御方は、この歌を最後まではとうてい詠じ切れず、途中から激しくせき上げて泣いた。姫君は数えで二歳。ちょうどかわいい盛りで、かたことを話し始めたところでもあろう。私は、このあたりを訳しながら、ついつい目め頭がしらの熱くなるのを禁じえなかった。こういうところを、じっくりと味わいながら読んでみると、『源氏物語』は、なんと奥行きの深い物語であろうかと、今さらながらに驚かされる。どうであろう、あたかも、むかしの上質な文芸映画でも見ているような、静かな悲しみと美しさが横おう溢いつしているではないか。こんなふうに、親子恩愛の情という物差しを当てて見るならば、果たしてかの弘徽殿女御だって、ほんとうのところ「悪役」だったと言えるのだろうか。そんな単純な