ブックタイトル帝国海軍と艦内神社――神々にまもられた日本の海
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帝国海軍と艦内神社――神々にまもられた日本の海
25第一章 日本人にとっての神道と海の神かも知らない場合がある。そうした漁船が海に出たとき、船霊が船乗りたちに何かを知らせるために音や声を発する(「ナク」)といった伝承が、各地の漁村に伝わっている。航海の最中に、筒の下部から「チンチン」とナクような音が聞こえるというものである。この現象を「船霊様が〝そしる〟」とか「船霊様が〝いさむ〟」という言い方をすることもあるが、こうした船霊が発する音によって船乗りは嵐や大漁を知るという。彼らは一種の神託と捉えていたのだろう。神道的な感覚では、人間の力や知力など大自然の前ではたかが知れたものである。人間の力の及ばないものが人間をまもってくれているという感覚が、船霊に託たくされていたのだ。元海上自衛官であり、平成七年(一九九五)の阪神淡路大震災のときは阪神基地隊司令として救援活動を指揮した仲なか摩ま徹てつ彌やさんが、興味深い話を教えてくれた。「海上自衛隊でも戦前の海軍の伝統を受け継いで、みんなカッター(短艇と呼ばれる、船に搭載される手漕こぎボート)漕ぎをやってます。六人がかりで漕ぎますが、最初はロクに進むこともできません。現在は救命艇がありますから、事故を起こしてもカッターなんて使いません。それでもカッター漕ぎをやるのは、大人の男たちが集まっても所しよ詮せん海という