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概要

日米開戦の正体

61 第一章 真珠湾攻撃を始めたかったのは、誰なのか?だいに落付いて来て、終わりごろには平静になったので」として、東久邇宮は東條陸相に次を話します。「私がフランス留学中、ペタン元帥とクレマンソー元首相から、こんなことを注意された。アメリカは、今回の大戦〔第一次大戦〕で欧州において邪魔になるドイツをやっつけたから、次の戦争で、東洋で邪魔になる日本を叩きつけようとしている。アメリカは、日本が外交の下手なのをよく知っているから、日本をじりじりいじめて、日本の方から戦争を仕掛けるような手を打って来るにちがいない。そこで、日本が短気をおこして戦争をやったら、アメリカは大きな底力をもっているから、日本はかならず敗ける。だから、アメリカの手にのって戦争しないように我慢しなければならないと。現在の情勢は、まったくペタン元帥やクレマンソーの予言したようになっている。このさい我慢して、アメリカと戦争しないようにしなければダメだ。東條陸相は近衛内閣の一員である。軍では『命令に従う』という言葉があるが、いま天皇および総理大臣が日米会談を成立させたいというのだから、陸軍大臣としては、それに従うべきで、それでなければ辞職すべきではないか」東條はこれに対して、次のごとく言い、最後に「見解の相違である」と言います。「いま、アメリカは日本にたいしA(アメリカ)・B(イギリス)、C(支◎近衛文麿(このえふみまろ/一八九一‐一九四五)政治家。学習院から東大哲学科に進み、京大法科に転じる。内務省入省後、ベルサイユ講和会議に参加。貴族院議長などを経て一九三七年、第一次近衛内閣を組閣。軍部に押し切られ日中戦争に突入する。四一年の第三次内閣では東條陸相らの主戦論を抑えられず総辞職。戦後、戦犯に指名され服毒自殺。写真協力/国立国会図書館「近代日本人の肖像」