※本企画は2025年11月7日をもって終了いたします
番組ナビゲーター二人にとっての読書
長濱 私は文字を読めるようになる前から、絵本や読み聞かせで本に触れてきたので、自分の心の「柱」です。
映画だったり音楽だったり、自分のことを豊かにするものがたくさんあると思いますが、本だけは早送りできないし、自分がめくっていかないと物語が進んでいかない。そこが、好きなところです。
一言で読書とは何だろう――自分の人生というか、生活そのものに本当に密に寄り添ってくれているものなのかなと思います。
山口 こういうテーマって、答える側に相当な負担がありますよね(笑)。あえてお答えすると、何を読むか、どういう状況で読むかというケースによって違います。物語を読む時には旅行みたいな感じや映画を観ているような感覚がありますし、歴史書を読む時にはタイムトラベルしているような気持ちになったりもします。「時空の旅にでかけるための乗り物」みたいなものかもしれないですね。
ただ哲学書を読む時とかはまた全然違って、書き手と格闘するような感じで読みます。書き手と半ば口論をし合うような――。仕事で本を読む時もありますよね。だから僕にとって読書は「旅」であり、「喧嘩」であり、「仕事」でありって感じですかね。一言ではちょっと言えないですけど。
長濱 私にとっては「相棒」でしょうか。緊張する場面でも、本があると心が緩む感じがあります。お守りでもあり、友達でもあり、山口館長がおっしゃっていましたけど、一緒に冒険したり、タイムトラベルしたり、やはり「相棒」という言葉がぴったりかもしれません。
本の出会い方と意外な読み方
長濱 私は小説ですね。小説の中に出てきた小説や、音楽が気になります。あとは、「好きな作家さんの尊敬している作家さんをたどると面白いよ」と教えていただきました。
最近は人に紹介してもらったり、会話に出てきた本を読んだりすることが多いです。本屋さんに行って選ぶことが少なくなってきましたが、できるだけそういう出会い方も大事にしたいなと思っています。本屋さんではインスピレーションで選ぶことが多いです。
山口 「読み切り率」ってどのくらいですか?
長濱 九〇パーセントは超えると思います。基本的に読むのが小説なので、「最後に何か待ってるんじゃないか」といった期待とともに読み進めます。文体とかがリズムに乗れないなっていう時は一旦本を置いて、また違うタイミングで開いたりすることはあります。
山口 僕の「読み切り率」は、多分一割を切っていると思います。読んだ本の九割は途中でやめて、サヨナラしているので。僕の本の選び方は、あんまり参考にならないって思いますね。もう片っ端から買うので。
長濱 読書が苦手な方にとっては、「途中でやめてもいいんだ」という言葉はとても勇気が湧くと思います。文体が合わなかったらやめてもいいと伝えたいです。それが読書の自由なところというか、読み手の自由なところというか。
山口 小説って、最初つまんないことも多いんですよね。五〇ページぐらい読まないと面白くなってこない作品もいっぱいある。だから、ビジネス書も人文科学の本もそうなんですが、僕は「斜め読み」することも多いんです。パラパラパラパラって一秒一ページぐらいの感じで読んで、「面白くなってきたな」と思ったら遡って読み直す。小説ではさすが
にできないんですけど、人文科学なんかでは「うしろから読む」ことも結構ありますよ。
ねるさんがおっしゃったように「好きな作家が好きな人」も参考になります。最近、村上春樹さんを読み始めたんですが、彼が「絶対に読んだほうがいい」って言っていたのが『カラマーゾフの兄弟』と『グレート・ギャツビー』と『キャッチャー・イン・ザ・ライ』。あの村上春樹さんが大傑作って言っているのならファンとして読まなきゃ、というモチベーションになりましたね。そういう風に芋づる式に選ぶことが多いっていうか。ある本を読んで、その中で言及されていたり、その人が書いていたりするもので他の本を読んでみようとか。そうやってつなげていくことが多いかもしれません。
(つづきは、本書の第8章)
山口 周
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。
慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、H Rアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。その他の著書に、『ビジネスの未来─ エコノミーにヒューマニティを取り戻す』(プレジデント社)、『人生の経営戦略─自分の人生を自分で考えて生きるための戦略コンセプト20』(ダイヤモンド社)など。J-WAVE「NTT Group BIBLIOTHECA 〜THE WEEKEND LIBRARY〜」では、図書館長としてナビゲーターを務めている。
長濱ねる
1998年、長崎県生まれ。幼少期を五島列島で過ごす。2015年にけやき坂4 6(現在の日向坂46)に加入したのち、欅坂46のメンバーとしてデビュー。2019 年に同グループを卒業。卒業後は、C M、バラエティ、ドラマなどで活躍2023年には初のエッセイ『たゆたう』(KADOKAWA)を上梓。現在、セカンド写真集『長濱ねる』(講談社)が発売中。J-WAVE「NTT Group BIBLIOTHECA 〜THE WEEKEND LIBRARY〜」では、図書館司書としてナビゲーターを務めている。
「NTT Group BIBLIOTHECA 〜THE WEEKEND LIBRARY〜」著作家・山口周と俳優・タレントの長濱ねるがナビゲートする、「週末にオープンする図書館」をコンセプトにしたラジオ番組。哲学、テクノロジー、S D Gsなど多様なテーマの本を通じて、よりよい生き方や社会のヒントを探ります。現代社会の課題をやさしく、しなやかに紐解く知的プログラム。
J-WAVE(81. 3MHz) / 毎週土曜 15:00 - 15:54
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