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ジャンル・タイトル・著者名
文芸書(文庫を除く)
木暮荘物語
著者名:三浦しをん

2011-07-01 bloomingさん 神奈川県
この作家が本当に優れたストーリーテラーだという事を改めて実感させてもらえた一冊だった。一見普通で、ものすごく変わったところは無い、だけれども自分は何となくずれているのでは無いだろうか(もしかしたら、大半の人はそんなものかもしれない)と思っている人には感じるものが必ずどこかに含まれているのでは無いかな、と思う。どの編にも多かれ少なかれ、性に関する問題?描写?が含まれるが、その距離感が秀逸。ヒトって、生物学的にもセックスに関する事情が極めて複雑である事は誰もが分かっている事で、その辺のモヤモヤ感に寄り添うような心地良さがいい。身体に伴う実感と意識のズレ、のようなもの。全編に漂う何ともいいようのないそのモヤっとした感じを、最後の「嘘の味」で瀬戸並木君に上手に語らせているところに、読後感の爽やかさが生まれる、というか、救いになるような気がする。ちなみに、私は現在臨月を迎えた妊婦である。身体の実感と言えば、これ以上無い位のものを腹に抱えて、何となく久しぶりに読み返した私に、この作品は優しく寄り添ってくれたような気がした。ヒトは繁殖の為のみに欲望が生じるわけにあらず。大変ややこしい生き物である。

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