|
 | 一般書籍(小説を除く) 謹訳 源氏物語 七 著者名:林 望 | 
 | 2011-12-31 十三さん 神奈川県 この齢になって源氏を原文で読み始めた(目下、紅葉賀)のと偶々時を同じく林望さんの謹訳が刊行されたのを幸い、七巻までを読んで物語の全体像の把握に資すること多く、国語学者であり作家である林さんの訳は、まさにこの稀有の文学「源氏物語」を理解し鑑賞するのに必要かつ十分な条件を満たした、滋味溢れ香り高い作品である。
私がとりわけてこの本に惹かれる点は、まず第一に、この物語を貫いて表裏一体の重要な要素である作中の和歌一首一首の意味に、行き届いた丁寧な解説が施されていることである。次に第二は、所謂現代語訳でありながら、原文の古語調の調べを底流させるような表現を(かくして、さりながら、されば、かかる、さまで、等々接続詞に多いのだが)適時適切に用いて、原文との親近感をかもし出していることである。そして第三には、原文の現代語訳の中に、漢語(特に熟語)が極めて的確に用いられて、古典文学に相応しい格調をもたらしている(殷殷、皓皓��赫赫、悄然、滂沱、切歯扼腕、軽挙妄動、等々)ことである。これは、漢文・漢詩に親しんできた我々の世代にとってはなおさらに、近年の現代風の表現では満たされない文学の風味を蘇らせてくれるものであり、同時に、源氏物語の重厚な古典的な世界、空間が再構築されているからである。
林望さんの謹訳が、平成の源氏物語の一大金字塔であることを疑わない。
|  |
|