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文芸書(文庫を除く)
残りの人生で、今日がいちばん若い日
著者名:盛田隆二

2015-02-12 土屋 洋さん 神奈川県
この作品は中年にさしかかった男女が辛い過去を乗り越えてお互いを必要としていく過程をリアルな筆致で描いた恋愛小説である。主人公であるシングルファーザーの直太朗と婚活に失敗した書店員の百恵は特別な人ではなく、私たちのまわりにいる隣人である。ともに辛い家庭環境を経験し、これからの人生に漠然とした不安を抱えている。不意の出会いとお互いが惹かれあう場面が巧みに設定されている。先の読めない急展開が続き、読者を紙面に釘付けにする盛田氏の練達の手腕はさすがである。出版や書店の内情、父子家庭、精神疾患、子供の虐待、小学生にまで普及したツイッター等々、ていねいに描かれる背景から、まさに今私たちが生きている社会で進行中の出来ごとに思えるのだ。生きにくい時代に懸命に前に進もうとする人への作者の優しい眼差しが心に残り、ラスト6ページには胸が震えた。読む者に自身の残りの人生を考えさせ、希望をもたらす作品である。

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