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ジャンル・タイトル・著者名
文芸書(文庫を除く)
潮鳴り
著者名:葉室 麟

2016-05-08 翔天海さん 福岡県
 前略、葉室先生は同郷の出身ということで親しみを感じ、「蜩ノ記」を読んだ時から尊敬していました。そこには、しくじりをした檀野庄三郎の目を通して、戸田秋谷の命を区切られ「死」を意識しての人生を、穏やかにかつ、壮絶に生きる姿がありました。そして、今作「潮鳴り」にふれ、一気に読み、感涙とともに、感動で心震えました。私自身、仕事上でしくじりがあり、窓際に追いやられ、現在も襤褸蔵のような底辺を這いずり回り、抗う気力もなくなった時、本著に出会いました。櫂蔵の生き様はどん底の辛苦をなめ、そのきつさ・つらさをお芳という同じ境遇にあるかけがえのない人との出会いで、乗り越えることができました。新五郎やお芳が亡くなった終盤も、「ひとはおのれの思いにのみ生きるのではなく、ひとの思いをも生きるのだと」となお生きてこそ、価値があると感じ取りました。私自身、現代社会はしくじった者に冷たく,まるで掃き溜めに捨て去るような風潮を感じ、悲観していました。葉室先生の人間だからこそ、しくじりもある、そのような境遇を生き抜いてきた人だから、人に優しく強く生きられるという温かい眼差しを感じることが出来ました。「生きることが、それがしの覚悟でござる」「落ちた花を再び咲かす」という堕ちた伊吹櫂蔵の不屈の生き様にふれ、生き抜くことの力強さに,自分自身が励まされ、今日を大事に生き、明日も生きねばと思うようになりました。本当に有難うございました。


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