2016-08-07 門馬 千秋(モンマチアキ)さん 千葉県 朝井まかて氏の作品は、広範かつ緻密な文献渉猟に基づくテーマ設定の構想力、そしてそれを作品にしていく構成力が素晴らしい。
「落葉」は個性あふれる新聞記者たちの動きを使って明治神宮の成り立ちを通奏低音にして、明治天皇の心象に踏み込むという難しいテーマにチャレンジして見事に成功している。
また、当時の風俗、国民の”空気”まで巧みに描いている。そのために現代の小説ならカタカナで済ます表記を当時の漢字表記を忠実に再現しているところも、時代の雰囲気を伝える重要な要素となっている。そして、植物や着物に関する該博な知識が作品に厚みを与えており、かつ季節に関する鋭敏な感覚も作品の彩(イロドリ)を豊かにしている。
直木賞受賞作の「恋歌」も「落葉」も複数のテーマを複合的に表現しており、その手腕は並大抵のものではない。同氏が今後どのようなテーマを取り上げるのか、大いに楽しみにしている。
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