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文芸書(文庫を除く)
また、桜の国で
著者名:須賀しのぶ

2016-11-13 朝陽さん 長崎県
 ナショナリズムとアイデンティティについての物語であると同時に、誰かの犠牲の上に生きることを恥じる人々の話でもある。ナチス・ドイツの侵攻を受けるワルシャワの地において、自分が生きることだけで精一杯の過酷な状況に置かれながら、それでも他人を蹴落とし、あるいは見て見ぬ振りをした記憶に、人々は苛まれる。
 歴史のうねりに飲まれながらもがく人々、ひとりひとりの苦悩と葛藤が、いきいきとした生活者として描かれている。平時であってさえ、わたしたちは誰かを犠牲にせずには生きられない。だがそのことを恥と思う心を忘れたくないとも思う。戦時にあってはそのことがありありと浮き彫りになる。過酷な運命の中で人間性を失わずに生きる人々の姿が胸を打つ。
 ぜひ広く読まれてほしい作品。

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