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ジャンル・タイトル・著者名
文芸書(文庫を除く)
ランチ酒
著者名:原田ひ香

2018-03-29 増井夢登さん 広島県
美味しい食べ物の小説が読みたい、と思い、本屋をさまようままに「ランチ酒」と出会った。
美味しそうな表紙に、そそられるような文面が踊る帯。右下には「あぁ、一杯の至福。」
一目で「これだ」と思った。私が今求めている小説は、これだ。
ファンタジー、それもライトノベルばかり読んでいる自分だが、高校入学を期に、卯月の誕生日プレゼントを前借りする形で買ってもらった。
春休みの有り余る余暇を使い、いざ読書。淡い緑の扉をくぐり、目に飛び込む「ランチ酒」の文字。胸の高鳴りに任せ、ページをめくる。
沢山の料理が並ぶ目次は、楽しみが損なわれるかとあえて避け、第一酒。
「武蔵小山 肉丼」。あぁ…この六文字に溢れる、旨味。
食欲に任せ、読み始める。
昼前、商店街。駅前、さらにその裏へ。街道沿いの一軒、肉料理。
あっと言う間に、魅了された。
肉、ご飯、酒。なんと魅力的なのか。成人していないことが心底惜しい。自分も、このマリアージュを味わってみたい。
そこからはもう、止まらなかった。
チーズに寿司に焼き魚。刺身に牛タン、ソーセージ。祥子の五感を通じ、数多の調和に浸る。
そして、ご飯と共に奏でられる人間模様。少しずつ、少しずつ前を向く祥子の姿に、勇気をもらう。
読後は、前向きに生きられる、空腹な自分がいた。
──褒めてやりたい。この本に決めた数日前の自分を、力いっぱい抱きしめたい。
書き上げて下さった原田ひ香先生に、発行して下さった祥伝社様に、この本に決めた自分に、溢れんばかりの感謝を。ありがとうございました。

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