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ジャンル・タイトル・著者名
文芸書(文庫を除く)
さんかく
著者名:千早茜

2019-11-27 安田吏架子さん 滋賀県
心も胃袋も掴まれた1冊だった。千早さんの作品はいつも登場人物と同じくらい、卓上に並ぶ食事の品々にも血が通っている。美味しそうを通り越し、もはや美しいとさえ思ってしまう、そしてかなり官能的だとも。
本書を読み進めていくにつれ、3人の男女の抱えた心の角が、温かい料理の品々によって取れていく過程はなんともいじらしかった。
角は取れたにせよ、最後までみなどこか素直になれず、決して丸くはなれない所はご愛嬌。
そしてこの物語を、あの侘しげで儚い京都で描こうと思った作者に改めて大きな拍手を送りたい。物静かで生真面目で、だがそれが妙に色っぽい京都の街は、高村さんに似ているなと思うし、この物語は京都でなければいけないなという確信に満ちた何かを感じた。
どうも、ご馳走様でした。

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