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ジャンル・タイトル・著者名
文芸書(文庫を除く)
未踏峰
著者名:笹本稜平

2009-11-05 郷原義文さん 東京都
それぞれ心に重荷を背負いしかも登山はまったく無経験の若者三人が、かって先鋭的クライマーだったが、同じように心の傷をもつ先輩の導きでヒマラヤの未踏峰に立つ。はじめ、裕也が社会の落伍者になるくだりはいかにも説明的に思えたし、ストーリーとしてはありふれていると冷めた気持ちで読み始めた。しかし、読んでいくうちに山の先達であり人生の先輩であるパウロの生き様がなかなかうまく描かれているなと思うようになり、同時に若者三人が少しずつ成長していく様子がほほえましく感じられるようになってきた。7000mに満たないとはいえ、ズブの素人が簡単にヒマラヤの峰を落とせるわけがないという経験者から批判も、ヒマラヤ以上の苛酷さがあるといわれる冬富士登山を含む十分な経験が積まれていることに安心感を覚えた。パウロが一緒に行けなくなったという設定もいい。三人がパウロに頼らず、それぞれに成長していく姿が、より鮮明になったからだ。競争者の出現も山岳描写に深みを加えている。未踏峰は人生そのものだと作者はいう。読後自分の気持ちがあたたかくなるのを感じた。




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