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小説(文庫を除く)
襲大鳳(下) 羽州ぼろ鳶組
著者名:今村 翔吾

2020-11-08 安川仁子さん 宮城県
待っていた「襲大鳳(下)」を発売後すぐ購入し、弟の仏前に備えてから読ませてもらった。昨年癌で亡くなった弟は余命わずかで体力も残っていない病床で、羽州ぼろ鳶組シリーズを読むのを唯一の楽しみにしていたが、「襲大鳳(上・下)」はついに読むことができなかったからである。
 今回の内容で最も印象に残ったのは、元尾張藩火消頭取伊神甚兵衛の最後である。甚兵衛が夾竹桃の毒煙の中を人質の桐生の百姓たちを救うため、また、自分の火消しとしての人生を全うし、人として生き直すために、蔵の壁に穴をあける排煙作業を最後まで行い、亡くなってゆく場面である。これぞプロの誇り、生き方。そして、10年前の東日本大震災時に、患者や家族を守るために最後まで奮闘し、津波に呑まれ、白衣のまま泥海に浮かんだ多くの医療従事者の姿が重なり、胸が詰まり、涙が溢れた。プロとはなんと切なく、誇り高いものなのだろう。その志はきっと後から来る者たちに受け継がれてゆくに違いない。この後、松永源吾や同世代の火消したちはどのような人生を送ることになるのかとても気になる。作者は既に最終話の構想を持っているということなので、楽しみに待っていたい。そして、出版されたら、また天にいる弟と一緒に楽しみたいと思っている。


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