2021-05-21 谷口毅さん 大阪府 「ひと」が「人」でない理由を求めてこの本を購入した。タイトルが良いとか、読者を惹きつけるとかではなく、単に平仮名で名付けられた意味がどこにあるのかを知りたかった。
読み進めるとじんわり伝わってきたのは、主人公の聖輔の誠実さと出会う人たちの優しさ。日々の暮らしの中で私たちは誰かと何かを相談し、口論し、赦しあい、愛し合って生きている。聖輔はまさに友人や職場の仲間たちに救われながら生きる道を掘り当てていく。時に裏切られた、見透かされ、嘘をつかれても、その誠実さはそれらの鬱蒼とした淀みを払い除ける爽やかさを持ち合わせている。聖輔の周りにいる人たちは、お互いに頼り合う「人」ではなく、ほんのりとした優しさで包み合うまるで平仮名の「ひと」たちなのだ。ひとと生きることの素晴らしさを、すべてを失った聖輔から教えられた。
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