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一般書籍(小説を除く)
家族は知らない真夜中の老人ホーム--やりきれなさの現場から
著者名:川島 徹

2025-08-22 比呂子さん 青森県
高齢者にかかわる仕事に携わったことがありますが、二度とその分野には行けないと考えています。高齢者の介護・支援に対する意味や重要性を自分なりにかみ砕くことができなかったからです。この本の「やりきれなさ」を常に感じていながらの職務だったからです。川嶋さんの「やりきれなさ」は私の感じたものと相違があるのかどうかを探求しながら読み進めさせていただきました。多くの介護職に携わる方々が、自分なりの「やりきれなさ」を抱えているのだと思いました。私は「やりきれなさ」に耐え切れませんでしたが、理不尽なことでも組織に従わなくてはならないのが現実だということを川嶋さんは示してくれたと思います。介護の現場は、自分のミッションを達成するために利用者さんの尊厳を尊重しないこともしばしばでしょう。巻末の女性の、人生最後の食事が書かれていましたが、描写がリアルすぎて涙が出ました。とにかく少しでも食器に盛られた食事の量を減らさなくてなならないのです。色々な物をぐちゃぐちゃに混ぜ利用者さんをおだてながら、時に叱りながら固く閉じられた唇の間にスプーンを押し付けねじ込もうとする。この作品は短編で川嶋さんの経験談が主なので、高齢者介護施設のリアルを知るには最適だと思います。経営者やケアマネが介護保険法や建前だけのサービスを書き連ねる本は事実だけど、現場の事実では無いと、私はこの本で改めて感じました。

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