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 | 文芸書(文庫を除く) もう二度と食べたくないあまいもの 著者名:井上荒野 | 
 | 2010-04-29 この花咲くやさん 埼玉県 もうずっと、愛することをやめていたことを、思い出した小説だった。自分の姿を見ないでいても愛されることはできる。けれど、誰かを愛するには、そうはいかない。愛する人を求めて見つめれば見つめるだけ、自分の醜さ、愚かさ、切なさ、他愛なさ、すべてが愛する人の鏡に映って目に入ってくる。その苦しさ。そして、そんな自分の姿を見ることに耐え切れなくなって、いつしか愛することをやめていた。甘美な時間は忘れていない。だけど、もう二度と食べたくはない。ここに登場した男や、女たちのあきらめように。なにげない日常を、なにげない言葉で描いて、作者は、忘れようとしているものを目の前に広げてくれてしまった。ああ、また誰かを愛する苦しみに耐えることができるだろうか。
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