Photo:佐野円香
撮影現場にて。左から井浦新さん、監督の穐山茉由さん、深川麻衣さん、大木亜希子さん
このたび、私が書いた小説『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』が映画化されることになりました。
主演の安希子役を深川麻衣さんが、ササポン役を井浦新さんが演じてくださいます。
本作の主人公は、29歳で人生に詰んだ安希子です。
仕事や恋愛に悩み、お金もなく、全方位で人生に詰んでいた頃の私の体験談がベースです。
当時の私は何事にも自信が持てず、自分がやりたいことも見つからず、婚活に焦りました。
周囲の人が羨ましく、他人の視線ばかり気にして、少しでも「順調な自分」に見られたかった。
最終的に偽りの自分に疲れ、盛大に詰みました。
そんな安希子が、家族でも恋人でもない他人のおっさんと出会うことで再生される過程を描いております。
主人公のモデルは、紛れもなく私です。
しかし、あらゆる女性の分身として描いたキャラクターでもあります。ですから、貴方自身の物語でもあります。
この映画を観たり、私の作品を読んだりしてくれた方が「色々あるけど明日も頑張ろう」と思えますように。
私は、私のままで良い。
少しでも多くの方にそう思っていただけたら、あの頃の自分の思いも少しは成仏していく気がします。
そのために今日も私は机に向かい、作品を生み続けたいと思います。
大木亜希子
「あ、人生に詰んだ」
ある日、駅で突然、亜希子の足が動かなくなった。
仕事へ行こうとすると体が拒否する。
彼女は元アイドル。
芸能界で挫折後、新たな幸せを摑むため、一般企業に就職し、夜は恋活に励んでいた。
収入も途絶えた亜希子は、五十六歳のバツイチ会社員「ササポン」が住む一軒家に居候することを決断する──
本作を書くきかっけとなったWebメディア「Dybe!」に寄稿した記事「赤の他人のおっさんと住むことを選択した」は配信後、多くの著名人などによって拡散され、ツイッター日本のトレンドランキングでは3位に。
書籍化されると、「朝日新聞」「毎日新聞」「東洋経済オンライン」「爆報!THEフライデー」(TBS)「OF LIFE」(MBS)など新聞やWebメディア、テレビで紹介され、大きな話題になった。
脆弱で孤独な二人に必要だったのは、誰かと一緒に居られる場所だった。
アラサーの己を卑下し客観的に書こうとするほど、"元アイドル"に未だ価値があると根底で思っている視線の在り方が際立つ。コントロールしきれぬ部分も露見するほど筆者が本気だからこそ、本作は映画『ブルージャスミン』を超える魅力を放つ。
ササポン(おっさん)、
日本にあと100万人くらいいてほしい。
ササポン量産化希望
ドン詰まるんだ。生きるって、ドン詰まる。
もう書くことしか残ってない。
ドン詰まってる。でもそこから始まるんや。
「あ、人生が詰んだって、こういうことを言うんだ」
自分の弱さを呪った。… 大木さんの物語は、みんなの物語でもある。
いまはこの種の苦しさを振り返ることができるくらいの余裕はできたけど、
でもやっぱり思い出すとお腹がギュッとなる。
「家族」になにを求めるのかってことが
更新されつつある時代だと思います。
「適齢期までに」「ハイスペックな男性と」結婚しなければ――未だに呪いを呪いと思わず苦しんでいる女の子達は、この本にとても共感するように思いました。ササポンのような、ただ居てくれるだけの存在の貴重さ、うつろうけれど今だけでも寄り添ってくれる女友だちの愛おしさがわかるようになれば、少し生きるのが楽になったりしますよね。
すごく読みやすくて面白い。大木さんの才能に感服しました。20代の不安な気持ちを思い出し、そしてこれから我が子たちも体験するのだと思うと他人事ではありません。若い世代の方たちにも読んでもらいたい。そしてその親世代の方たちにも薦めやすい作品と私は思いました。私自身はササポンのように心に余裕のある人間になりたい。ササポンの生活は理想です。
ササポンすごいです。元アイドルで、アラサー女子で、恋愛や仕事でいろいろ悩んで面倒臭くなってる女の子に対しての、適度な距離感。著者の体験が元に書かれた小説、ということで、タイトルにインパクトがありました。でも、読んでみるとササポンを始め、人の優しさに触れて、女の子が自分を取り戻していく話でした。元アイドルが、赤の他人のおっさんと住んだ後、どんな人生を歩んでいくのか応援したくなります。
元SDN48の大木亜希子さんが、精神的などん底を経験しながら、一人の見知らぬおじさん=ササポンとの共同生活をきっかけに立ち直っていく。ササポンは触媒だな、と思った。大木さんと肉体関係があるわけではない。ただ、彼とコミュニケーションすることで、救われていく。そこにいるだけで安心させてくれ、意識を変えてくれる。時には厄介者を追い払ってもくれる。でも、関係性が変わるわけではない。大木さんは、それまでの人生で失ったものも大きかったけれども、ササポンがきっかけで得たものも大きいのだ。
大木さんがこんなに痛い目あって、それでも生きてるんなら、私も大丈夫かも。なんて、勇気をもらえる、笑い袋みたいな一冊です。
ライターでもある著者の初の私小説。なかなか人生順調にはいかない三十代を迎える一人の女性が素を見せる勇気と恐れと、意識無意識に関わらず変化していく過程が心に迫る。また、著者の女性の友人達による時にはじゃれ合いながらも真摯に相対する救いや、同居している五十代男性「ササポン」氏からの励ましや経験に基づいた何気ない緩やかな言葉によって、今まで著者が身に着けていたきっちりとした固い鎧が解かれ、新たにしなやかで自然体な衣装を纏う様が鮮やかに見えてくるようだった。そして、言葉は自分がより良く変わる事ができる魔法だし、反対に奈落の底へ陥る劇薬でもある。著者のシンプルで衒いのない文章からその両方をダイレクトに感じ取ることができ、さらにそれでも傷つくということは、もしかしたら悪いことだけではない、辛いこともあるが、その積み重ねを経て無器用かもしれないが成長していこうという確かな姿勢が眩しくも頼もしい。読み終えてそう素直に思える小説だった。
大木亜希子さんの最新刊、感動しました。ページが終わりに近づくにつれ、ぼわーっと涙があふれてきました。女性が(男性も)共感し、癒される内容でした。何かに疲れたり、何かが辛かっり、何かを諦めたり、気持ちがゆらゆらした時に、きっと心が軽くなる。飾らない言葉が、胸にストレートに響きます