『ヒポクラテスの誓い』ドラマ化記念 原作者 中山七里インタビュー

text= 祥伝社文芸編集部 
photo =近藤陽介

なぜ法医学をテーマにした小説を書こうと思われたのですか?

 いつもそうなのですが、担当編集者のリクエストに答えた結果ですね。今回は専門的な職業のミステリーという要望でした。

解剖場面や法医学の実情について詳細に描かれていますが、
どのように知識を得ていらっしゃるのですか?

 取材をするよりも、その部分を「らしく」見せる想像力のほうが重要と考えていますので、取材はしていません。昔読んだ上野正彦さんの『死体は語る』や映画などで見た解剖シーンの記憶をもとに、肉付けしています。現状についてはニュースで見聞きしたものを参考にしています。

この小説の最後には作品全体を貫くある仕掛けがありますが、
これはどのように?

 それも新聞で見た、あるニュースを参考に思いついて、テーマとの兼ね合いを考えながら、成立する方法を逆に考えていきました。

映像化決定の報せを聞いたときのお気持ちを教えてください。

 詳細な解剖の描写が作品の肝ですので、映像化は難しいと思っておりました。本格的な描写をするWOWOWさんがドラマ化してくださると聞いて納得しました。

出演される俳優さんたちが大変豪華ですね。

 小説を書くときに特定の方をイメージしているわけではないので、映像化になると、いつも意外性があって面白いですね。光崎教授は六十代後半の設定なのですが、演じられる柴田恭兵さんは若々しいイメージだったので、意表をつかれました。

撮影の見学に行かれたそうですが、感想は?

 解剖室は素晴らしかったです。といっても、私も実際のものを見たことはないのですが、大多数の方が想像していらっしゃるような青白い光に照らされ、冷たい感じのする空間になっていました。

すでに編集された映像をご覧になったそうですが、いかがでしたか?

 「ヒポクラテスの誓い」が書かれた碑文を読み上げたり、その前で話したりする場面が何度も出てくるのでテーマがはっきり伝わってきてとてもよかったです。また原作における一話目をほぼ削って、他の部分を膨らませるかたちになっているのですが、ドラマではこのようにするほうが効果的で、小説との違いがあって面白かったですね。主人公の真琴が自らの意志で積極的に行動するさまも好ましかったです。

(2016年8月 祥伝社会議室にて)