三十歳の非正規社員、
キム・ジヘ。
正社員を目指しながら
半地下で暮らす彼女が
ある出会いを機に始めたこと──。
それは社会への"小さな反撃"だった。
1988年ソウルオリンピックの年に生まれ、三十歳になった非正規社員のキム・ジヘ。88年生まれに一番多い名前「ジヘ」と名付けられた彼女はその名の通り、平凡を絵に描いたような大人になっていく。
大企業の正社員を目指すジヘの前に現れたのは、同じ年の同僚ギュオク。彼の提案する社会への小さな反撃を始めることになったジヘは、自身を見つめなおし、本当にしたかったことを考えるように。
そして、ついに「本当の自分」としての一歩を踏み出すことになる──。
大企業DMグループ系列のスクール事業「ディアマンアカデミー」のインターンとして働く、非正規職の30歳。半地下の部屋で一人暮らしをしながら、正社員を目指し、いつかDM本社で働くことを夢見ている。
「ディアマンアカデミー」に新しく入社してきたインターン。ジヘと同い年。愛想が良くて礼儀正しく、人望があるものの、どこか妙な陰のある謎多き男性。ジヘをウクレレ講座に誘い、ジヘとそこで知り合った仲間たちに、社会への‶いたずらのような、小さな反撃″を提案する。
30代のシナリオ作家。かつて自分の書いたシナリオをわずかな契約金で売ったものの、それが映画化されると、自分の名前が脚本ではなく原案者として表記されていることが判明。ショックのあまり、執筆を中断した状態が続き、現在に至る。
50代で、中学生の娘がいる。かつて食堂を営んでいたが、現在は閉店。その理由は共同事業者に騙され、事業を乗っ取られたことによるものだった。現在は、動画配信でサイバーマネーを稼ぎながら、家族と離れて一人、細々と暮らしている。
『アーモンド』が感情をテーマにした物語だとしたら、『三十の反撃』は「どんな大人になるか」という問いから始まった作品です。(中略)
今この瞬間にも、韓国だけでなく日本をはじめ世界中に、当時の私と同じような気持ちで奮闘している若者がたくさんいると思います。私の本がそんな人たちを少しでも勇気づけられればと思っています。
──ソン・ウォンピョン
『アーモンド』は私たちに愛と共感の力を教えてくれましたが、『三十の反撃』は自分らしく生きていく勇気を与えてくれる作品だと思います。私自身、翻訳しながら何度も背中を押してもらいました。この物語が長く読み継がれ、多くの方々の心に届くことを願っています。
──矢島暁子
ソウル生まれ。西江(ソガン)大学で社会学と哲学を学び、韓国映画アカデミーで映画演出を専攻。多数の短編映画の脚本、演出を手掛け、「シネ21映画評論賞」、「科学技術創作文芸・シナリオシノプシス部門」を受賞。2020年には長編映画監督作品『侵入者』が公開された。
文壇デビュー作となった長編小説『アーモンド』(2017)は、第10回チャンビ青少年文学賞を受賞。続いて出版された本作『三十の反撃』(2017)は、第5回済州4・3平和文学賞を受賞している。他に、長編小説『プリズム』(2020)、短編小説集『他人の家』(2021)がある。
邦訳版『アーモンド』(矢島暁子訳、祥伝社)で2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位を、続く本作(邦訳版)『三十の反撃』(矢島暁子訳、祥伝社)で2022年本屋大賞翻訳小説部門第1位を受賞。
学習院大学文学部卒業。高麗大学大学院国語国文学科修士課程で国語学を専攻。訳書に『アーモンド』のほか、チョ・ナムジュ『ミカンの味』(朝日新聞出版)、イ・コンニム『世界を超えて私はあなたに会いに行く』(KADOKAWA)、イ・ギュテ『韓国人のこころとくらし──「チンダルレの花」と「アリラン」』(彩流社)、キム・エランほか『目の眩んだ者たちの国家』(新泉社)、洪宗善ほか『世界の中のハングル』(三省堂)がある。
よし、みんなでこの本を読もう。
大きな反撃でなくても、
小さな反撃でいい。
きっとお守りになってくれる
はずだから。
ブックセンタージャスト 大田店 島田優紀さん