もうこれで英語に挫折しない

赤羽雄二(あかばゆうじ)

ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクター。1978年、東京大学卒業後、小松製作所入社。1986年、世界的コンサルティング会社マッキンゼーに入社。2002年、ブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業。著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『ゼロ秒思考[行動編] 即断即決、即実行のためのトレーニング』『頭が真っ白になりそうな時、さらりと切り返す話し方』など。

世界的コンサルティング会社マッキンゼーで14年間活躍した赤羽雄二氏。
だが、マッキンゼー入社直後は、あまり英語が話せなかった。特に、誰かが話している際に割り込む、といったことはとうていできないレベル。しかし、マッキンゼーソウルオフィスをゼロから立ち上げ120名強に成長させる過程で、英語力も否応なく急激に伸びた。
そんな赤羽さんだけに、日本人の英語の現状には強い危機感を抱いている。
英語のできない日本人の問題を徹底的に分析し、さらに自身の経験を踏まえて編み出した「英語を続ける技術」について解説する。
今回は、誘惑に弱い自分でも英語を勉強せざるを得ない状況を作るヒントを考える。

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2016.04.11

英語を勉強する必然性を作る

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「英語ができるようになるといいな」では、無理

 

 英語に限らず、「できるようになるといいな」という程度のものに時間をかけ、うまくできるようなことはあまりない。
 毎日が暇で暇でしょうがなければ別だが、ビジネスパーソンは皆、忙しい。今すぐやらなければならないことが常に山積みになっていて、「時間ができたらやろう」とまでは考えても、できる時間はいつまでたっても来ない。
 したがって、今日こそは勉強しようと思っても、翌日までの緊急の書類作成に追われたり、あるいはどうしても眠気に勝てなかったりするのが普通ではないだろうか。私は眠くなるとアンメルツを首や肩に塗ったり、場合によって額に塗ったりするが、いったん眠くなるとほとんどの場合は、どうにもならない。机の上に突っ伏して15~20分前後寝て何とか回復しようとするが、余計に眠くなるだけだったりする。
 英語のように、毎日触れ、毎日慣れることで体にしみこんでいくタイプのスキルは、「時間ができたらやろう」という姿勢では、全く身についていかない。もっと能動的かつ継続的な努力が必要だ。しかもいわゆる「努力」とあまり感じさせない方法を考える必要がある。

 

 

英語の勉強への必然性を自分から作り出す

 

 新しいスキルを身につけるには、大きく二つ方法がある。
 ゴルフ、テニス、ゲーム、音楽など、初めて出会ったときにものすごくはまり、夢中になってやり続けることがある。気づいたときにはかなりのレベルまでスキルアップしている。
 こうなるのは、対象が非常に楽しく、娯楽性が強いものに限られるだろう。英語の場合、初めて触れて驚喜し、「辞書の全ページを読み進むことがどうしようもなく楽しい」という人も希にいるかも知れないが、よほど恵まれた学究肌の人に限られるだろう。普通の人にとって、そこまで楽しいことではないと思う。
 スキルアップの二番目の方法は、勉強への必然性を作ることだ。
 英語を勉強する必然性を作るとは、要するに「誘惑に弱い自分でも英語を勉強せざるを得ない状況を作り出す」「追い込まれる状況を作る」ということだ。締切がない作業を淡々と飽かずたゆまず続けることは、普通の人にはちょっとむずかしいのではないか。少なくとも私には無理だ。

 

 

必然性を作る8個の具体例

 

 では、 「誘惑に弱い自分でも英語を勉強せざるを得ない状況」とはどんなものだろうか。
 以下、8個の具体例を簡単に紹介する。このような状況に自分を追い込めば、英語をやらざるを得なくなるはずだ。

 


具体例 1: 自分が好きで強い関心を持つ分野の記事を読む、動画を見る

 

英語を勉強し、使えるようになるには、自分が好きなこと、強い関心を持つことに対して「日本語での情報は少ししかないので、英語でもいいからもっといっぱい知りたい、深く知りたい」というところから手段としての英語の必要性を感じ、英語になじむ必要がある。
アップルやグーグルほどの影響力の大きい企業であっても、最新動向や今後の動きはごく一部だけしか翻訳されていない。ネットで検索すれば読み切れないほど記事があるではないかと疑問に思われた方は一度、あるテーマに関して検索して出てくる記事を100個ほど実際に読んでみてほしい。真剣に読めば読むほど、片寄った情報、一部の情報しかなく、本当はどうなんだろう、何かインタビュー記事とかないのだろうか、となるはずだ。

 

 

具体例 2: 日本語になっていない海外の最新情報を毎週共有する仲間を作る

 

慣れない英語情報を見落としなく素早く理解し、行動に活かすことは簡単ではない。一人で全部やろうとすると、さすがに苦しい。
自分が見つけた海外の最新情報を共有する仲間を作ると楽しいし励みになる。
「ねえねえ、知ってる? これ!」「え? 知らなかった! どこで見つけたの?」「え? 知りたい? 教えてほしい?」というのは楽しい会話だ。スポーツや音楽の世界だけではなく、技術やIT、ビジネスの世界でも同じように楽しい。

 

 

具体例 3:「あしたやればいい」をなくすには、勉強の進捗を仲間に宣言する

 

何かを毎日やろうと決めても、その通りに続けられる人はかなり少数ではないだろうか。少なくとも、私にはまずできない。自分一人だと挫折しても自分で叱るしかないが、仲間がいれば彼らの頑張りが刺激になる。
英語を勉強する場合も、仲間を作ってお互いに今週はどこまでやる、毎日はどのくらいやる、ということを宣言しあう。仲間はFacebookやLINE上で募れば、すぐに何人か集まる。ゴールと進捗共有だけであれば、必ずしも実際に集まらなくても可能で、今日からでも始めることができる。

 

 

具体例 4: 英語の勉強仲間と勉強会を開く。進捗共有し、英語で発表しあう

 

具体策3で作った英語の勉強仲間と、定期的に勉強会を開く。実際に顔を合わせるとさらに挫折しづらくなる。
頻繁に会うのは大変なので、数カ月に一度程度集まればよいと考えている。そこで英語の勉強が予定通り進んだか進まなかったか、どうすれば挫折せず進めることができたか発表する。最近読んだ記事、見た動画などを英語で紹介し合う。

 

 

具体例 5: 留学生や日本に来た外国人に、日本について説明する

 

英語を話せるようになるには、何と言っても、必死になって誰かに説明することが必要だ。私は、日本語を話せない留学生や日本に来た外国人に対し、日本について説明するのが一番いいのではないかと考えている。
情報量はこちらが圧倒的でありホームグランドなので、英語で話すハードルが下がる。そうこうしているうちに、英語でコミュニケーションすることに対しての抵抗感や照れがなくなっていく。

 

 

具体例 6: 留学生や日本に滞在する外国人に、日本語を教える

 

英語の勉強をするには、英語を教えてもらわなくてもできることがある。「留学生や日本に滞在する外国人に日本語を教えることで、英語を使わざるを得ない環境に身を置く」というものだ。
相手もこちらも必死なので、英語への照れなど感じているひまがない。
本気で日本語を教えると、教え方がうまくなる。外国人はそれぞれの国の人がしっかりつながっているので、後輩や友人が来日したときは、「日本語を教えるのが非常にうまい、素晴らしい日本人」ということでコンタクトされる。

 

 

具体策 7: 英語での講演を依頼され、引き受ける

 

英語を使う必然性の一番高いものは、英語での講演を依頼されることだ。
外国人の知り合いが一人でき、二人でき、留学生・外国人コミュニティに出入りするようになると、日本に関しての講演を依頼されることが増えてくる。
大切なことは、何でもいいから英語で講演することだ。英語で発信する日本人があまりにも少ないので、どんなことでもいいから講演の機会をとらえて発信すると喜ばれる。

 

 

具体策 8: 日本の文化、歴史、最新事情について発信する英語ブログを書く

 

英語での講演機会は非常によいが、そうそうあるものではない。ところが、自由自在に英語を使う機会、必然性を徐々に強めていく機会が実はある。日本の文化、歴史、最新事情について英語ブログで発信する、という方法だ。
英語が使えなくて困っているのに英語ブログなんか、という人がほとんどだとは思うが、英語の中級者以上で、頑張れば何とかかんとか文章を書ける、という人であれば、トライしてみる価値は十分にある。
まずは日本語でブログを書き始め、書くことにある程度慣れてきたら、ときどき英語のブログもはさんでいく、というのが現実的かも知れない。ブログを書くといろいろなところで好循環が始まるので、お勧めしたい。

 

もうこれで英語に挫折しない 赤羽雄二
もうこれで英語に挫折しない

マッキンゼーで14年間活躍できた私は英語をどう身につけたか

赤羽雄二著

(2016年3月31日発売)

 

『ゼロ秒思考』の著者が編み出した「続ける技術」、全公開!
英語のできない日本人の問題を徹底的に分析。これが結論。
仕事はできるのになぜか英語は続かない――そんなあなたのための本です。