いえ 小野寺史宜

下町荒川青春譚 第3弾!本屋大賞第2位『ひと』、そして『まち』に続く、新たな感動作誕生
妹が怪我を負った。
僕の友だちでもある
恋人とのドライブデート中の
事故だった。
家族と、友と、
やりきれない想いの
行き先を探す物語

あらすじ

案外面倒な兄なんだな、おれは──

社会人三年めの三上傑には、大学生の妹、若緒がいた。仲は特に良くも悪くもなく、普通。
しかし最近、傑は妹のことばかり気にかけている。

傑の友だちであり若緒の恋人でもある城山大河が、ドライブデート中に事故を起こしたのだ。後遺症で、若緒は左足を引きずるようになってしまった。
以来、家族ぐるみの付き合いだった大河を巡って、三上家はどこかぎくしゃくしている。
教員の父は大河に一定の理解を示すが、納得いかない母が突っかかり、喧嘩が絶えない。
ハンデを負いながら、若緒は就活に苦戦中。

家族に、友に、どう接すればいいのか。思い悩む傑は……。

『いえ』登場人物表

三上(みかみ)(すぐる)(25)
おれ。傑はすぐると読む。傑物、豪傑、の傑だ。
残念ながら、おれは傑物でも豪傑でもない。どちらかと言えば凡人だ。
どちらかと言わなくても凡人。
ハートマート両国店に勤めて三年めの社員。
江戸川区平井に住んでる。江戸川区だが荒川沿いだ。
三上(みかみ)若緒(わかお)(22)
おれの妹。就職活動中の大学生。
特に仲のいい兄妹ではない。悪くもないだけ。普通だと思う。
でも最近は、いつも妹のことを考えてる。
雨降ってきたけどあいつ傘持ってるかな。階段を急いで下りようとしてないかな。
そうせざるを得なくなったのだ。事故に遭ったから。
城山(しろやま)大河(たいが)(25)
おれの中学時代からの友だちで、若緒の恋人。
ドライブデート中に強引な右折をして対向車と衝突事故を起こし、助手席にいた若緒に怪我を負わせてしまった。
若緒が左足を引きずるようになって以来、おれは大河とまともに話してない。
三上(みかみ)達士(たつし)(55)
おれの父。墨田区にある都立高で教頭を務めてる。
朝のごみ出しを忘れたとか、夜のフロ掃除を忘れたとかで、母には文句を言われがち。
父は大河を受け入れてる。少なくともおれの目にはそう見える。
おれも、教師である父が、あの野郎ふざけやがって、娘を傷ものにしやがって、みたいなことを言ったら、それはちょっといやだな、と思ったはずだ。
三上(みかみ)(はる)(52)
おれの母。専業主婦。
はっきり言うと。母は大河を受け入れてない。
おれが小さかったころは大河を好きだった母。
若緒が付き合いだしたころもまだ大河を好きだった母。
それがあの事故で変わった。大河への期待は一気に霧散した。
福地(ふくち)美令(みれい)(25)
おれのカノジョ。阿佐ヶ谷に住んでる。ふりかけをつくる会社の三年めの社員。
おれがスーパーの社員だからといって勝手に注文を増やしたりすることはできないが、美令の会社のふりかけは、ついつい商品棚のいい場所に置きたくなる。

書店員さんから あったかい コメント続々!

  • 『ひと』を読んだ時の感動そのままに、私の心に温かい何かが流れ込んできた。体全体に沁みわたる余韻。読んでいる時が、まさに至福の時なのだ。

    ──谷島屋 ららぽーと沼津店 小川誠一さん
  • ひとつの家族の端っこにいさせてもらっているような感覚で家族の行方を見守る気持ちでした。
    小野寺さんが描くのは、
    いつも誰かが誰かのことをちゃんと考えてくれている人達ばかりで心がとてもじんわりします。

    ──岩瀬書店富久山店 吉田彩乃さん
  • 人の心の機微を鮮やかに描き出す小野さんの筆が、
    時間と共に優しく物語を進めて、新たな関係を構築していく。
    人間って、きっと良いものなのだ。
    関わる皆が優しく再生していき、読者の心に温かい感動が残される、
    そんな素晴らしい物語。

    ──大垣書店イオンモールKYOTO店 井上哲也さん
  • 小野寺史宜さんの描く人の気持ちはいつも私たちに寄り添う。
    最後に爽やかで、温かい優しさで包んでくれる。
    作品の中のみんなが好きだ。
    『ひと』の田野倉のコロッケや
    『まち』にでてきた人がこの作品で再び登場して、嬉しかったです。

    ──ジュンク堂書店滋賀草津店 山中真理さん
  • 主人公、妹、友人、父、母。それぞれの気持ちがわかるからこそ、苦しい。
    それでも、淡々と語られる文章が読んでいてとても心地良い。
    主人公の行動がとても丁寧で気持ちが良かった。

    ──東京旭屋書店新越谷店 猪股宏美さん
  • 「ひと」から「まち」へ広がった物語が「いえ」へと戻ってきた。
    筧ハイツもおかずの田野倉も江藤君も郡君も出てきてファンにはたまらない。
    ひととひとの間には、「言葉」が必要だな、としみじみ思う。

    ──精文館書店中島新町店 久田かおりさん
  • 年が明けてまもなく出会ったこの作品は、また新しい年が来ても、何度新しい年が来ても、読み継がれていく一冊になるであろう。

    ──有隣堂 トレアージュ白旗店 小出美都子さん

著者コメント

Profile

千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」でオール讀物新人賞、08年「ROCKER」でポプラ社小説大賞優秀賞を、そして2019年に『ひと』で本屋大賞第2位を受賞。著書に『ホケツ!』『家族のシナリオ』(小社刊)『みつばの郵便屋さん』『ひりつく夜の音』『近いはずの人』『リカバリー』『本日も教官なり』『それ自体が奇跡』『夜の側に立つ』『ライフ』『縁』などがある。

 

 

いえ

小野寺史宜

■長編小説
■四六判
■定価1650円
978-4-396-63618-0

好評既刊

2019年本屋大賞第2位
本の雑誌が選ぶ
2021年度文庫ベストテン
第1位
(おすすめ文庫王国2022より)

ひと

■長編小説
■祥伝社文庫
■定価759円
978-4-396-34718-5

まち

■長編小説
■四六判
■定価1650円
978-4-396-63580-0
イラスト/田中海帆
購入
試読