著者インタビュー

「本所おけら長屋」シリーズの第二幕がスタートしました。まずは新シリーズにどのような想いが込められておりますでしょうか。率直なお気持ちをお聞かせください。

「本所おけら長屋」は物語の着地点を決めて書き始めたわけではありません。初版1万部でスタートしたときは、シリーズ化されるなどとは夢にも思いませんでした。なんとなく書き進めていったら、5巻、10巻、15巻…、気がついたら20巻になっていたって感じですね。目指しているのは「偉大なるマンネリ化」です!(笑)
〝新〟という冠がつきましたが、読者のみなさんに「こいつら、ぜんぜん変わってねえ!」と呆れ返ってほしいですね。今までと同じ、そのままの〝おけら長屋〟をお届けしたいと思います。


「新 本所おけら長屋」ご執筆に際して、これまでと変わったこと、楽しかったことや苦労されたことはありますでしょうか?

執筆は〝苦しい〟のひと言に尽きます。前期高齢者となり、集中力も体力も根性もなくなってきましたからね。このシリーズは1冊に短篇が何話か入っていますが、今までに100話以上書いてきました。ネタは尽きましたね。〝もう屁も出ねえ〟ってやつです。執筆で楽しかったことなんて一度もありませんよ。
 ただ、書店さんのイベントなどで、読者の方々とお話しできるのは楽しいですね。「笑えた」「泣けた」って感想をお聞きすると、ヤル気が出てきます。読者のみなさんの言葉が原動力になっています。


第1巻目では「まんてん」、「みかえり」、「にたもの」の3篇を収録しております。今回も、笑いあり涙ありのいいお話ばかりでしたが、特に思い入れ深いお話はございますでしょうか?

作品に対する思いは平等ですよ。〝デキ〟に差があることは仕方ありませんが、どれも私の生んだ子供ですから。最近は短篇3話収録が基本になっていますが、バランスが大切ですね。全篇を支配するのは〝お笑い〟ですが。「捕り物」「武士もの」「恋愛」などで、合わせ技一本を狙っています。「新・本所おけら長屋(一)」で突出しているのは「みかえり」でしょうね。こんなクダラナイ物語を書けるのは私しかいないでしょう!(笑) でもね、現代社会の問題点を鋭く描いていたりして…。してねーか…(笑)
最終話の終幕には気をつかいます。温かい気持ちになって読み終えてほしいですからね!


2巻目以降、新キャラクターの登場や、前シリーズでは描けなかった展開もあるかと思います。今後についての構想を少し教えていただけますと嬉しいです。

だから、ネタがないんだって! 構想なんて何にもないですよ! 助けてください!(泣)


「本所おけら長屋」シリーズを開始されてから、今年で12年目を迎えます。長年描かれてきて、一貫して変わらないことがありましたら、お教えいただきたいです。

「おけらシリーズ」は文芸作品ではありません。読者のみなさんに、ただ、ひたすら笑って、泣いてもらいたいために書いています。私はそのスタイルに誇りを持っています!
そもそも、私には文芸作品なんて理解できませんし、読み切ったこともありません。
私みたいに気軽な小説を求めている人は多いんじゃないかなあ。そう信じてこの小説を書いています。
文学賞には無縁の小説ですが、商業作家としては売れる小説を書きたいです。読者のみなさんに支持されたってことですから!


最近では小説のご執筆以外にも、ふくだのぞみさんの絵本『いよっ! えどっこだねぇ』の原案も手がけられております。またかつては、漫才の台本の執筆もされておりましたが、時代小説のご執筆と共通している点、異なる点をお聞かせください。

世の中で大切なのは〝善か悪か〟ではなく〝粋か野暮か〟なんですよ! 世の中がどんどん野暮になっていくのが心配です。SNSでの誹謗中傷や、週刊誌での不倫報道、ストーカーにクレーマー…。野暮ですよねえ。野暮に染まってしまった大人はもう仕方がありません。それなら子供に期待しますってんで、絵本にも手を出してしまいました。江戸っ子を媒介にして「人を助ける」「弱い者に味方する」「顔で笑って、心で泣いて」「やせがまん」…。そんな粋な人に育ってほしいのです!
度が過ぎて、おけら長屋の人たちみたいになってしまっても困りますが…(笑)


最後に''おけら長屋''ファンにひと言お願いいたします!

いつも〝おけら長屋〟をご愛読くださりありがとうございます! みなさんに喜んでいただけるよう、心血を注いで執筆いたしますので、どうかお見捨てなきよう、今後ともよろしくお願い申し上げます!