算盤の練達にして〈風の剣〉の遣い手。
さすらいの渡り用人・唐木市兵衛
風に吹かれて悪を斬る!
時代小説の名手・辻堂魁
剣戟あり、人情ありの圧巻シリーズ
江戸を流行風邪が襲った。蘭医柳井宗秀は、重篤の老旗本笹山卯平に請われて、唐木市兵衛を紹介する。卯平は密かに金貸を営んでおり、百両近い貸付が残る五千石の旗本広川助右衛門へのとりたての助役を依頼したのだ。助右衛門は返済逃れの奸計を巡らす。同じ頃《鬼しぶ》の息子良一郎は北町奉行所に出仕、見習仲間と賭場で破落戸相手に大立回りを演じてしまい……。
《宰領屋》矢藤太の許に大店両替商《近江屋》から、唐木市兵衛を名指しで口入の周旋依頼があった。蟄居閉門中の武州川越藩士に手紙を届けてほしいという。二人は川越藩主に国替えの噂があり、資金調達のため圧政下にあると知る。異論を唱えた藩士も改易は必定、その時は江戸に迎えたいというのだ。市兵衛は矢藤太と共に赴くが、到着するや胡乱な輩に囲まれ……。
唐木市兵衛に返り討ちにされた刺客の一族が、復讐を誓い市兵衛の身辺探索を始めた。一方、大坂に情が移り江戸への出立を渋る小春を、亡姉の親友お茂が訪ねてきた。幼馴染みが辻斬りに遭い、生死の境をさ迷っているという。犯人捜しを始めた市兵衛だったが、己れの居場所を刺客に突き止められてしまう。良一郎らを先に発たせた市兵衛は、自ら死の罠に飛び込み……。
定町廻り《鬼しぶ》の心配をよそに、唐木市兵衛は未だ大坂に在った。世話になった長屋のお恒の息子が、突然、殺されたのだ。堂島の蔵屋敷で働く孝行息子だったが、その背中には幾つもの刺し傷があった。下っ引の良一郎らと下手人を追う市兵衛。堂島は米の取り付け騒ぎに震撼していた。同じ頃、市兵衛をつけ狙う刺客が現れた。気配からかなりの凄腕と思われ……。
北町奉行所定町廻り同心・渋井鬼三次の息子・良一郎が幼馴染みの小春と失踪した。書き置きから大坂への欠け落ちが疑われた。腕利きの文六親分の下ッ引をつとめる良一郎が何故?《鬼しぶ》と綽名される友の心中を察した市兵衛は、若き日、算盤を学んだ大坂へ。二人の捜索中、市兵衛は良一郎が探っていた、大坂に本店を持つ騙りの噂が絶えない両替商を見つける…。