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誰もいない清水寺に
行ってみたら……

KYOTO

 清水寺といえば、京都旅行の大定番。いつ訪ねても、人、人、人でごった返しています。「日本人も忘れているようなホンモノの日本をフランス人に紹介する」を制作活動のモットーとするアトリエ・セントーのセシルさんは、担当編集が「キヨミズ」と口にするなり、「えーっ?! 何回も行きましたよ。外国人観光客が多いです。行けと言われれば、行きますが」と、やや不満な様子。
 そこで担当編集、ニンマリ。
 「誰もいない清水寺を見たくないですか?」
 思わず食いつくセシルさん。
 あまり知られていませんが、清水寺は朝6時に開門するのです。朝一番で訪ねれば、人もまだ少ないのではないかと考えたのでした。
 早起き決定で、ふたたび気分ダウンのセシルさんを盛り上げながら、「早朝から観光客でごった返していたらどうしよう」と内心ドキドキしていました。
 実は、かくいう担当編集も早朝の清水寺は初体験。いつもどおりの混雑した清水寺だったら、せっかく早起きして行っても"ボツ"になってしまいます。
 結果は、このとおり。

まさに誰もいない清水寺門前だった!

 こんな景色、はじめてです。
 ワクワクしながら、誰もいない本堂、誰もいない地主神社をお参りし、いよいよ奥の院の舞台へ。ここから眺める本堂と京都市街の遠景がクライマックスです。
 清水寺を訪ねる人たちのお目当ては、ほとんどが舞台と音羽の滝、地主神社ですが、個人的には、釈迦堂、阿弥陀堂、奥の院と3棟の美しい建物が横一列に並んでいるところと、それらを包みこむ背後の山のたたずまいが好きです。セシルさんも釈迦堂の檜皮葺(ひわだぶき)の屋根があまりに美しいのに感嘆していました。実際、休日の日中に訪ねる清水寺では、建物ひとつひとつを鑑賞する余裕が生まれないのも仕方がありませんが。
 こうして朝もやの中をゆっくりお参りして、清水寺もまた『鬼火』に登場するような神仏の宿る場所だということを改めて感じさせられたのでした。
 周囲があまりにも静かなので、セシルさんも鳥のさえずりのような小声でレポートしています。ボリュームを上げてご視聴ください。

映像 ほぼ誰もいない清水寺

 いかがでしたか? (小声で)私たちのほかに2人、いらっしゃいました。「誰もいない」を「ほぼ誰もいない」に訂正させていただきます。それでも、境内にいた参拝者・観光客は、あわせて10人くらいだったと思います。
 なぜ、ほとんど無人なのでしょうか。
 平日の早朝であるほかに、現在、本堂が修理中で、大きな素屋根ですっぽりおおわれてしまっていることがあるかもしれません。これはこれでめずらしい光景なので、まあ良しとしましょう。
 高く組まれた本堂の足場を見て、セシルさんがあることに気づきます。
 「すばらしい! 木しか使っていませんね。フランスだと鉄です」

木で組まれた足場

 たしかに……。
 足場の合間から、音羽の滝が見えます。

本堂から見た音羽の滝

 休日は、水をくむ人たちの行列、それを写真で撮る人たちの垣ができていますが、このときは「ほとんど無人」でした。
 こちらの名所も体験しておきましょう。

それにしても長いひしゃくですね

 音羽の滝といえば、子供のころ、気になっていたのが、ちょうど滝が落ちる位置にある謎の石のでっぱり。3本の滝の下に3組並んでいます。

滝の下にある石のでっぱり

 これは滝に打たれる修行者のための踏み台です。いまも滝行はおこなわれているのでしょうか。やるとしたら、夜しかありませんが。
 大満足で清水寺をあとにした2人は、休日はやはり大混雑の三年坂を通ってホテルに戻ることにしました。時計は7時半を回っていましたが、三年坂もガラガラ。坂の途中で見かけたのは、早起きした地元のおじいさんと、アジア系の若い男女だけでした。

無人の三年坂を撮影するセシルさん

 お土産屋さんや甘味処は当然ながら開いておらず、どこも素地の木戸が固く閉められています。はからずも一抹のさびしさを覚える担当編集を横目に、「木のトビラが町並の美しさをいっそう引きたてていますね」と大コーフンのセシルさんでした。



『鬼火
 ―フランス人ふたり組の日本妖怪紀行

ISBN 978-4-396-61623-6
定価:本体2778円+税
B5変型判

ⓒEditions Issekinicho-France-2016
Authors: Atelier Sento-Cécile Brun, Olivier Pichard
ⓒChinatsu Komagata-2017